合間縫う腑に落ちない音楽

肩透かしのカタストロフィは続く

ぼくのかんがえたさいきょうの「朝日新聞」改革案

あるメディアから連載の依頼があったので、サンプルとして提出したら、「サイトのスタンスとしてリベラル、安倍政権批判みたいなところは一貫させたい」ということでボツになった原稿を掲載します。 先日、朝日新聞社の鮫島浩氏がツイッターでこんな投稿をし…

「解像度を上げる」ということ

The Basket of ApplesDate: c. 1893 Artist: Paul Cézanne French, 1839-1906 さいきん「解像度」という言葉を使う人が増えて、共感することが多い。 日常の解像度をあげろ。解像度をあげ、世の中に満ち満ちている理不尽さや変わらない非人道的な仕組みに怒…

のん(能年玲奈)さんが語りをした武満徹「系図」のCDが届いた

のん(能年玲奈)さんが語りをした武満徹「系図」のCDが届いた。一度聞いて、この曲の新しい演奏史ができたなとうれしくなった。 www.amazon.co.jp これから繰り返し聴くことで新たな感想が生まれたら追記するけど、第一印象としては、このキャストは大成功…

SNS時代に「バカ舌」どもが自分の「好み」だけでベラベラとモノを言えるようになったことについて

第11回目のDANROの連載が公開されました。 danro.bar Yahoo!に配信された分についた2つのコメントが印象的だったので、ピックアップしておきたい。1つはこれ。 あの料理にはこの酒、これにはそれと、あーだこーだ言う人もいるが、結局好きな食べ物と好きな酒…

福島の日本酒14種類を実際に飲んでリストアップする

新しいDANROのコラムが公開された。少し間が空いたのは編集部の都合。 *JR福島駅周辺で「ふくしまの日本酒」をたらふく飲んで日帰りした話(リンク切れ。再公開日未定)。 今回も無計画、場当たり的な(私の人生そのもののような)旅について、単に時系列で…

遠野凪子の「系図」に思うことなど

*「#のん さんによる #武満徹「Family Tree」への期待」を改題。 のん(能年玲奈)さんが武満徹の「系図」の語り手をつとめる録音の発売が、この10月に決まったとネットで話題になっている。 www.barks.jp 初演以来、20年以上にわたってこの曲の価値を訴え…

バルトークの弦楽四重奏曲第5番の謎を解く

結論から書くと、バルトークの弦楽四重奏曲第5番(1934年)は、ベートーヴェンの交響曲第5番(1808年)にインスパイア(触発)されて書かれたのではないか、という仮説である。その理由を3つあげる。 なお、この説はよそでは見たことがないので、自分のオリ…

BBC「Proms」の過去の演奏会で最も視聴されているYouTube動画は何か?

前回、プーランクの動画を探索する過程で、「BBC Proms」の動画をピックアップした。その後、ふと確かにイギリス人は、クラシック音楽のエンタメ化に成功していることに気づいた。 プロムスの解説はWikipediaに譲るが、要するにBBCがスポンサーになったプロ…

プーランク「六重奏曲」をコンサートホール以外で演奏する試み

クラシック音楽をカッコよく撮る方法について、とりとめもなく考えてきたのだか、不図したことで面白い動画に出会った。 曲はフランシス・プーランクの「六重奏曲」である。ピアノと4本の木管楽器(フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット)、それに…

YouTubeにおける弦楽四重奏の扱いの現状

きのうは「クラシック音楽をカッコよく撮る」などとイキってしまったが、実は実態をよく把握していなかった。新しい市場を作るのだから、市場調査に振り回されてもしようがないのだが、やはり現状は知っておくべきだ。 ということで、YouTubeで「String Quar…

クラシック音楽をカッコよく撮る

まだみんなに知られていないけど、エクストリームな天才が作ったクラシック音楽はイケてるし、カッコいい。もっと知られるべきだ。 幸い日本はまだ豊かなので、育成に無茶苦茶コストのかかるクラシック音楽の演奏家が、たくさん存在している。優れた若手のプ…

「仮想通貨バブル」と「出版塾ブーム」の類似点

「就職氷河期」の少し後に盛り上がった「出版塾ブーム」――。無縁のように見える2つの事象には、実は強い関連性があった。 出版塾のしくみの中心は、ネズミとまでは言えないが「講」のような相互扶助会だったことはご存知だろうか?塾の誰かが本を出すと、そ…

ベートーヴェン「運命」の正しい鑑賞法を考える

※ある媒体から頼まれてボツになった原稿。想定読者は音楽の教師。子どもたちの音楽教育が少しでもいいものになってほしいという祈りを込めて。 日本人にとって、俗に「運命」と呼ばれるベートーヴェンの交響曲第5番がクラシック音楽の代名詞のように思われて…

はあちゅう著『「自分」を仕事にする生き方』の全ページに風を通してみたけど「みんな不安だから大丈夫」なのか?

遅まきながら、はあちゅうの『「自分」を仕事にする生き方』(幻冬舎)を手に入れ、苦心して268ページすべてに風を通してみたので、メモを残しておきたい。 ネットを通じて、はあちゅうのイメージは固まっていたが、本によって改めて裏付けられた個所が2つあ…

サンソン・フランソワの弾く「レントより遅く」

最近、オフィスで仕事をしながら、イヤフォンで音楽を聴くことが増えた。 販売や飲食、製造ラインでもない限り、大勢の人たちが集まって仕事をする必然性は、いまやほとんどなくなったと言っていい。 にもかかわらず、わざわざ出勤するのだから、イヤフォン…

山形国際ドキュメンタリー映画祭2017の鑑賞メモ #yidff2017

10月7日(土)から9日(祝)までの3日間、山形国際ドキュメンタリー映画祭に行ってきたので、忘れないうちにメモ。開催期間は5日(木)から12日(木)までの1週間で、最終日には受賞作品を一気に上映したようだ。 www.yidff.jp 映画館のほか、中央公民館や市…

蓮実重臣くんと音楽の魔法

蓮実重臣くんが死んでしまった。同い年の彼を紹介してくれたのは同じ大学の先輩Mさんで、彼女がある音楽集団(しばらく後にそれが京浜兄弟社という天才の集まりだと知る)のコンピレーション・アルバムに参加するので、演奏の手伝いをしてほしいという。お…

消え物としてのコマエンジェル

2017年4月21日と22日は、コマエンジェルの記念すべき「幾星霜リターンズ」の公演日だった。3ステージ、延べ420人ほど集まったお客さんたちは、それぞれの場面で感情を揺さぶられ、笑って泣いて、号泣のあまりお化粧がすっかり落ちてしまった人もいた。 翌23…

わたしたちの幾星霜(コマエンジェル)

高円寺で終電すぎまで飲み、タクシーで帰ろうと思ったら、環七が年度末の駆け込み工事で渋滞していた。Google Mapで検索すると、このまま道をまっすぐ2時間ほど歩けば、自宅にたどり着けることが分かった。 考えごとを整理するには丁度いい時間だと思いなが…

酒田の食べ物屋

11月19日のコマエンジェル酒田公演には、東京から予想以上にお客さんが来てくれる。驚くべきことだ。確かにネタとして面白いと思うが、酒田はいくらなんでも遠すぎる。誘っておいてなんだが、酔狂としか思えない。 交通費もかかるけど、いい大人にとって一番…

シン・ゴジラを見た直後の10つの感想

1.世間の空気に負けて、シン・ゴジラを見に行ってしまった。結論としては映画館で見てよかった。100点満点で100点の面白さ、少し引いても98点くらい。でもそれほど、あるいは全然楽しめない人もいるだろう。たとえば女子高生には面白さは分からないのではな…

男女6人浄夜物語

長い金髪をたなびかせる、艶やかな1stヴァイオリンの女性(左端の半袖)。 彼女の取り巻きはジャケットを着た2人のイケメン、「アッシー」2ndヴァイオリンと「メッシー」1stヴィオラだ。 それでも果敢に挑む2本のチェロたち(ジャケットなし)。特に2ndチェ…

「顔芸」を使わないブーレーズ

ユリイカの「追悼特集ブーレーズ」の原稿依頼が一向に来ないので、彼の指揮ぶりの違いについて一本書いておく。 YouTubeの動画を見れば分かることだが、オーケストラの指揮者の多くは「顔芸」で仕事をしている。歓喜に満ちた顔、楽しそうな顔、悲しそうな顔…

ブーレーズと「夜明け」

終電で寝過ごして、終着駅で駅員に起こされて割増タクシーで帰ってきても、やはり当面はブーレーズについて1日1本は書いておかなければならない。 夜道をとぼとぼ帰りながら記憶をたどれば、闇夜に差す光の表現が秀逸だったことが思い起こされる。 もっとも…

ブーレーズと2つの「浄められた夜」

作曲家で指揮者のピエール・ブーレーズが90歳で死んだ。何が書けるというわけでもないのだが、何となく色々楽しませてもらったお礼も込めて、それを知った日のうちに何か書き残しておきたい。 彼のいろんな経歴や、自分のブーレーズ遍歴を書いても切りがない…

いまどき「クラシック音楽」を熱心に聴く明確な理由

クラシック音楽を聴くという行為に、いまさらなんの意味があるのか。 録音技術が発達したいま、同じ曲を何人もの演奏家が、繰り返し楽譜通りに弾くことに意味はあるのか。アーチストの作家性とパフォーマンスの一回性に賭ける大衆音楽に、明らかに負けている…

アメリカの音楽院で権勢を振るう東洋系美人演奏家たち

最近、NEC室内オーケストラの動画をよく見ている。といっても日本の電機メーカーではない。ニューイングランド音楽院のオーケストラのことだ。 つまりアマチュアの学生なのだが、これがバカにならない水準で、特に弦楽合奏の曲はなかなか聴かせる。例えばシ…

東京大空襲とショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第2番」との戦慄すべき一致

日本の学校教育が戦争についてきちんと教えないのには、おそらく理由がある。それは、戦争の具体的な事実について知れば、日本だけでなく、アメリカの「戦争責任」や「戦争犯罪」について考える材料を与えることになってしまうからである。 少なくとも、次の…

西池袋にクラシック音楽を流すバーがあった

池袋で所用を済ませたあと、人から聞いた西池袋のAというバーに行って、妙なことが気になった。樽に入ったシングルモルトも、ちょっと気の利いたナッツも、照明も店員のサービスも申し分ない。カウンターも、さほどいい板ではないが居心地は悪くない。 では…

ZARDの「負けないで」は社会主義リアリズムである

ZARDの「負けないで」がヒットしたとき、旧ソビエト連邦の「社会主義リアリズム」を思い出した。美術や音楽、文学というものは、すべからく「バカな労働者」にも理解でき「慰め」と「励まし」として機能しなければならないとする考え方である。 芸術というも…