合間縫う腑に落ちない音楽

肩透かしのカタストロフィは続く

音楽

立花隆さんに「知の巨人」はそぐわない

立花隆さんが亡くなっていた――。そんなニュースを見ながら、そういえば彼に関する思い出があるんだったと思い出した。歳のせいで思い出すのに時間がかかるようになってしまったし、もう二度と思い出さないかもしれないのでメモ。 福利厚生の手厚い出版社に勤…

タレイア・クァルテット@安養院

とても満足したコンサートだったので、あえて言葉にするのも億劫だなと思ったけど、悲しいことに記憶というものは薄れてしまい、いつしか消えてしまうものなので、備忘録として。 プロジェクトQ・第16章のバルトーク弦楽四重奏曲シリーズ(2019年2月24日)で…

「醜態をさらすより、早く死んだほうがいい」と言われたユーミンの今をあなたは見たのか?

2020年の印象的なできごとのひとつに、朝日新聞「論座」の暴走があった。 筆者の選定からしてジャーナリズムを放棄した活動家が目につき、事実による検証という本来のジャーナリズムを続けている同じ会社の峯村健司さんなどが気の毒になった。 そんな筆者の…

「未来の国では、全員アマチュアの時代が来る」(ロラン・バルト)

YouTubeの醍醐味は、なんといってもアマチュアの投稿だ。 私室の一角で、他人の眼を意識せずに、たったひとりで撮った動画がいい。そして、それをひとり覗き見するようにして視聴するのは、特に楽しい。 もちろん、プロが作り込んだミュージック・ビデオを繰…

シェーンベルク「浄められた夜」は美しい音楽への別れのラブレター

きょうは37.5度の熱が出て午後は半休をとったのでもう寝ようと思いながらもアレやってなかったので起きて書くことにします。スコア(総譜)ってブックに入るんでしたっけ? #ブックカバーチャレンジ 在宅勤務も2ヶ月半を超えた今日このごろですが、今年1月に…

スクリャービンのピアノソナタ第5番聴き比べ

スクリャービンのピアノソナタ第5番(1907年)をいろんなピアニストで聴き比べ、その違いについてメモして気を紛らわすことにする。 同じ曲を違う人の演奏で聴く意味 考えてみればクラシック音楽というものは奇妙なもので、作品として残っているものは楽譜と…

のん(能年玲奈)さんが語りをした武満徹「系図」のCDが届いた

のん(能年玲奈)さんが語りをした武満徹「系図」のCDが届いた。一度聞いて、この曲の新しい演奏史ができたなとうれしくなった。 www.amazon.co.jp これから繰り返し聴くことで新たな感想が生まれたら追記するけど、第一印象としては、このキャストは大成功…

遠野凪子の「系図」に思うことなど

*「#のん さんによる #武満徹「Family Tree」への期待」を改題。 のん(能年玲奈)さんが武満徹の「系図」の語り手をつとめる録音の発売が、この10月に決まったとネットで話題になっている。 www.barks.jp 初演以来、20年以上にわたってこの曲の価値を訴え…

バルトークの弦楽四重奏曲第5番の謎を解く

結論から書くと、バルトークの弦楽四重奏曲第5番(1934年)は、ベートーヴェンの交響曲第5番(1808年)にインスパイア(触発)されて書かれたのではないか、という仮説である。その理由を3つあげる。 なお、この説はよそでは見たことがないので、自分のオリ…

BBC「Proms」の過去の演奏会で最も視聴されているYouTube動画は何か?

前回、プーランクの動画を探索する過程で、「BBC Proms」の動画をピックアップした。その後、ふと確かにイギリス人は、クラシック音楽のエンタメ化に成功していることに気づいた。 プロムスの解説はWikipediaに譲るが、要するにBBCがスポンサーになったプロ…

プーランク「六重奏曲」をコンサートホール以外で演奏する試み

クラシック音楽をカッコよく撮る方法について、とりとめもなく考えてきたのだか、不図したことで面白い動画に出会った。 曲はフランシス・プーランクの「六重奏曲」である。ピアノと4本の木管楽器(フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット)、それに…

YouTubeにおける弦楽四重奏の扱いの現状

きのうは「クラシック音楽をカッコよく撮る」などとイキってしまったが、実は実態をよく把握していなかった。新しい市場を作るのだから、市場調査に振り回されてもしようがないのだが、やはり現状は知っておくべきだ。 ということで、YouTubeで「String Quar…

ベートーヴェン「運命」の正しい鑑賞法を考える

※ある媒体から頼まれてボツになった原稿。想定読者は音楽の教師。子どもたちの音楽教育が少しでもいいものになってほしいという祈りを込めて。 日本人にとって、俗に「運命」と呼ばれるベートーヴェンの交響曲第5番がクラシック音楽の代名詞のように思われて…

サンソン・フランソワの弾く「レントより遅く」

最近、オフィスで仕事をしながら、イヤフォンで音楽を聴くことが増えた。 販売や飲食、製造ラインでもない限り、大勢の人たちが集まって仕事をする必然性は、いまやほとんどなくなったと言っていい。 にもかかわらず、わざわざ出勤するのだから、イヤフォン…

蓮実重臣くんと音楽の魔法

蓮実重臣くんが死んでしまった。同い年の彼を紹介してくれたのは同じ大学の先輩Mさんで、彼女がある音楽集団(しばらく後にそれが京浜兄弟社という天才の集まりだと知る)のコンピレーション・アルバムに参加するので、演奏の手伝いをしてほしいという。お…

男女6人浄夜物語

長い金髪をたなびかせる、艶やかな1stヴァイオリンの女性(左端の半袖)。 彼女の取り巻きはジャケットを着た2人のイケメン、「アッシー」2ndヴァイオリンと「メッシー」1stヴィオラだ。 それでも果敢に挑む2本のチェロたち(ジャケットなし)。特に2ndチェ…

「顔芸」を使わないブーレーズ

ユリイカの「追悼特集ブーレーズ」の原稿依頼が一向に来ないので、彼の指揮ぶりの違いについて一本書いておく。 YouTubeの動画を見れば分かることだが、オーケストラの指揮者の多くは「顔芸」で仕事をしている。歓喜に満ちた顔、楽しそうな顔、悲しそうな顔…

ブーレーズと「夜明け」

終電で寝過ごして、終着駅で駅員に起こされて割増タクシーで帰ってきても、やはり当面はブーレーズについて1日1本は書いておかなければならない。 夜道をとぼとぼ帰りながら記憶をたどれば、闇夜に差す光の表現が秀逸だったことが思い起こされる。 もっとも…

ブーレーズと2つの「浄められた夜」

作曲家で指揮者のピエール・ブーレーズが90歳で死んだ。何が書けるというわけでもないのだが、何となく色々楽しませてもらったお礼も込めて、それを知った日のうちに何か書き残しておきたい。 彼のいろんな経歴や、自分のブーレーズ遍歴を書いても切りがない…

いまどき「クラシック音楽」を熱心に聴く明確な理由

クラシック音楽を聴くという行為に、いまさらなんの意味があるのか。 録音技術が発達したいま、同じ曲を何人もの演奏家が、繰り返し楽譜通りに弾くことに意味はあるのか。アーチストの作家性とパフォーマンスの一回性に賭ける大衆音楽に、明らかに負けている…

アメリカの音楽院で権勢を振るう東洋系美人演奏家たち

最近、NEC室内オーケストラの動画をよく見ている。といっても日本の電機メーカーではない。ニューイングランド音楽院のオーケストラのことだ。 つまりアマチュアの学生なのだが、これがバカにならない水準で、特に弦楽合奏の曲はなかなか聴かせる。例えばシ…

東京大空襲とショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第2番」との戦慄すべき一致

日本の学校教育が戦争についてきちんと教えないのには、おそらく理由がある。それは、戦争の具体的な事実について知れば、日本だけでなく、アメリカの「戦争責任」や「戦争犯罪」について考える材料を与えることになってしまうからである。 少なくとも、次の…

ZARDの「負けないで」は社会主義リアリズムである

ZARDの「負けないで」がヒットしたとき、旧ソビエト連邦の「社会主義リアリズム」を思い出した。美術や音楽、文学というものは、すべからく「バカな労働者」にも理解でき「慰め」と「励まし」として機能しなければならないとする考え方である。 芸術というも…

椎名林檎はロッテ・レーニャへの道のりを歩いているという妄想

あるキーワードで検索したら自分のブログがヒットしたので、過去の記事に久しぶり目を通してみたが、面白くも何ともなく、ただ気恥ずかしくて仕方がない。いわゆるブロガーさんという人たちも、これと同じようないたたまれない気分を味わっているのだろうか…